余談

余談ですが。
今回引用した「饗宴」では半陰陽という言葉は使われていません。androgunos < aner + gune = 男+女という訳者注があり、本文中では男女(おめ)という言葉が当てられています。英語のandrogynousは両性具有のと訳されることが多いですが、それだと文字面が締まらないので、半陰陽という≒の言葉を使いました。名詞と形容詞が入り乱れてますがご勘弁。

饗宴 (岩波文庫)

饗宴 (岩波文庫)

半陰陽はhermaphroditeやintersexの訳語として用いられることが多いように思います。英Wikipediaintersexualityを当たってみるとNomenclatureとしてHermaphroditeDisorders of sex developmentの二つが挙げられ、後者にはThe term is defined by congenital conditions in which development of chromosomal, gonadal, or anatomical sex is atypical.という解説がなされています。
文学などの芸術ジャンルにおける「両性具有」「半陰陽」には、「饗宴」がそうであるように、しばしば理想像や完全性が投影されます。ちなみにhermaphroditeの語源を調べてみるとこうなっています。

hermaphrodite |hərˈmafrədīt|
ORIGIN late Middle English : via Latin from Greek hermaphroditos (see Hermaphroditus ).
Hermaphroditus |hərˌmafrəˈdītəs| Greek Mythology
a son of Hermes and Aphrodite, with whom the nymph Salmacis fell in love and prayed to be forever united. As a result Hermaphroditus and Salmacis became joined in a single body that retained characteristics of both sexes.
(New Oxford American Dictionary 2nd edition)
はてな「半陰陽」キーワードで、病気の総称についても、一般的に使われている「半陰陽」「両性具有」などの呼び方には蔑視(べっし)的な響きがあるとして、10月に宇都宮市で開かれる総会で「性分化疾患」に統一する。という記述を読んだので、言葉の文化的背景を書いといたほうがいいかな、と思いまして、ブログ内でこっそりとではありますがアレコレ並べてみました。
「陰陽」というのがそもそも大変な広がりのある概念なので、私もその懐の深さをアテにして半陰陽という言葉を使ったのですが、広がりを持つがゆえに多面的な響きが生じることもあるわけで、そのあたりはやむを得ないところですね。ある人にとっては快い表現が、べつの人にとっては不快なものになる、という事態はよくあることですし、そういうmarginalなところでの綱渡りが文学というものの楽しみの一つでもあると思うので、言葉を使う上での抑制的な判断はしませんでした。


とまあ、そんな感じです。生理休暇中にしゃかりきになって何やってんだと我に返ったので強制終了。